大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和46年(そ)4号 決定

請求人 塚本和雄

決  定

(請求人・代理人氏名略)

右請求人から適法な刑事補償の請求があったので、当裁判所は検察官および請求人の意見を聞き、次のとおり決定する。

主文

請求人に対し、刑事補償法に基く補償金として金五九五、四〇〇円を交付する。

理由

一、本件請求の要旨は、

請求人は、同人に対する東京地方裁判所昭和四二年合(わ)第七四号、第八八号、第一四〇号、第一四三号、放火、同未遂被告事件について、東京地方裁判所刑事第一部で併合審理の結果、昭和四五年二月二六日無罪の裁判をうけたもので、この裁判は同年三月一三日(申立書の三月一二日は誤記と認められる)確定した。

ところで、請求人は右事件について、昭和四二年二月一二日逮捕されてから昭和四三年五月一四日保釈許可決定により釈放されるまで四五八日間にわたり抑留又は拘禁されたものである。よって右期間の抑留又は拘禁について、一日金一、三〇〇円の割合による合計金五九五、四〇〇円の刑事補償を請求する。

というにある。

二、よって案ずるに、請求人に対する前記被告事件の関係記録によれば、次の事実が明らかである。

請求人は、昭和四二年二月一二日住居侵入被疑事実について現行犯逮捕され、同月一四日以降右被疑事実および窃盗の被疑事実により勾留され、同月二三日一旦釈放手続がとられたが、同時にひきつづき、現住建造物放火未遂被疑事実について逮捕され、同月二五日以降右放火未遂被疑事実および現住建造物放火被疑事実について勾留され、同年三月六日前記現住建造物放火未遂事件について、当裁判所に公訴が提起された(昭和四二年合(わ)第七四号)。以後請求人はひきつづき右被告事件により勾留されていたが、同月二三日前記現住建造物放火事件についても当裁判所に公訴が提起され(昭和四二年合(わ)第八八号)、さらに同年四月二七日別の現住建造物放火未遂被告事件(昭和四二年合(わ)第一四〇号)につき、同月二八日さらに別の現住建造物放火未遂および非現住建造物放火未遂被告事件(昭和四二年合(わ)第一四三号)につき、それぞれ当裁判所に追起訴がなされ、以上の各被告事件は併合されて審理されていたところ、請求人は保釈許可決定により昭和四三年五月一四日釈放された。

そして、当裁判所は昭和四五年二月二六日請求人に対し、右各被告事件全部につき無罪の裁判を言渡し、同裁判は、同年三月一三日確定した。

三、ところで、請求人に対する当初の前記住居侵入被疑事実についての逮捕および住居侵入・窃盗被疑事実についての勾留も実質的には無罪となった本件公訴事実の取調べのための逮捕、勾留であったことが一件記録上明らかであるから、その部分の抑留および拘禁も無罪となった本件公訴事実についてのそれにあたると解するのが相当である。

したがって、請求人は結局無罪となった本件被告事件に関し、昭和四二年二月一二日から同四三年五月一四日まで、合計四五八日間にわたり未決の抑留又は拘禁を受けていたことになる。

そして、請求人について刑事補償法三条、五条二項に該当する補償除外事由は認められない。

そこで、当裁判所は、刑事補償法四条二項所定の諸般の事情を考慮したうえ、請求人に対し、一日金一、三〇〇円の割合による計金五九五、四〇〇円の補償金を交付するのが相当であると認め、同法一六条前段により主文のとおり決定する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例